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​ヒマラヤ紀行

昨年の夏、ヒマラヤ山脈の中腹に位置するいくつかの村を訪れた。ここではZanskar郡にある標高3669mのPadumという村で発見した、小さな建築とそれを維持するコモンズの不可分な関係性を紹介する。小さな建築というのはオフグリッドの麦の脱穀機としての建築である。ヒマラヤ山脈より流れる小川にこの小屋はまたがり、建物下部に設置された水車が回ることで脱穀のための機械が回転する。聞けばこの小屋を56人(推定10家族以上)がシェアしているという。ここではいつも異なるグループが脱穀を待つ間にこの小屋の前に居座り、脱穀したての麦を頬張りながら談笑している。それはこの小屋を介したコモンズであり、その存在が脱穀の機械化ではなく小屋を複数人でシェアするシステムを維持しているように思えた。現存するこの種の小屋はPadumに5つ程だそうで、筆者は3つ確認できたがうち1つは崩壊していた。著しくインフラ整備の進むこの一帯の地域の中にあって、機械化されずに小屋を取り巻く風景を維持できるかどうかはコモンズの存続にかかっている。

​Sho SASAKI

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